どこへ行く?トモエガモ

トモエガモってどんなカモ?


全長40cm、翼開長62〜73cmほどの小柄なカモです。
Anas formosaという美しいカモという意味の学名がついており、和名のトモエガモという名前の通り顔の巴模様が美しいカモです。
かつては、アジアでもっとも個体数の多いカモであったとされるカモですが、20世紀中頃から激減して世界的な絶滅危惧種となっており、アジア地域、日本、ロシア、韓国のレッドリストに掲載されています。
国内では特に片野鴨池に多く飛来するため、関東や関西や時には国外からもバードウォッチャーが訪れます。

夜は鴨池にはいません。


あまり知られていませんが、淡水に生息する多くのカモ類は夜行性です。
昼間は天敵に襲われにくい鴨池のような深い湿地で休息し、夜になると餌を求めてたんぼなどの浅い湿地へ飛び立ちます。
多くのカモはオスメスのペアで少しずつ飛んでいくのですが、トモエガモは大集団で一斉に飛んでいくため、間近で見るとすごい迫力です。しかし、このトモエガモたちの夜の行先が分かりませんでした。トモエガモは臆病なので、サーチライトを使った調査では発見より先に逃げてしまい、記録に残りません。
彼らにとって鴨池と同様に重要な「えさ場」を守るためには場所を特定しなくてはならないということで発信機を使ったトモエガモの追跡調査をすることになりました。坂網猟の猟師に協力してもらい捕獲したトモエガモ20羽に地上用発信機をつけ、放鳥しました。

見えぬけど さがしてみせよう トモエガモ


地上用発信機は、GPSなどの位置情報を発信してくれるわけではありません。 発信しているのはパルスと呼ばれる信号で、受信しても「ピッ・・・ピッ・・・」という音が流れるだけです。 受信をしてわかることは、「電波が受信できる範囲内にカモがいること」と、八木アンテナという道具を使って調べる「電波が来る方角」だけ。 調査では、車に立てたアンテナで発信音を探して走り回り、うまく電波を受信したら八木アンテナで方角を記録する。これをひたすら繰り返しました。
あとは地図上にいくつかの地点から計測した方角を書き込めば、その線が交差した場所周辺に、発信機をつけたトモエガモがいると推定できます。
毎日深夜までかかり吹雪の中のでアンテナを広げて小さな受信音を聞くような大変な調査でしたが、今までわからなかったトモエガモのえさ場が新たにわかってくることがそれ以上の喜びでした。

ここにいました トモエガモ


3か月に及ぶ調査の結果、トモエガモたちは左の地図の赤い点の場所に行っていることがわかりました。
加賀市周辺の広い範囲を使っていますが、その中でもいくつかの地域に集中しており、特に柴山潟の干拓地では今回の調査で発見できた地点の3分の2が見つかっています。
また、永井・瀬越町などの大聖寺川下流域の水田や、金明小学校周辺のたんぼでも多くの記録があり、これらの地域には冬に水がたまっているたんぼがたくさんある地域です。
今回の調査でトモエガモは「水がたまったたんぼ」が好きなことがわかってきました。

ついに写った トモエガモ


地上用発信機の調査をもとに、実際にトモエガモが採餌をしている写真を撮ろうと、水がたまったたんぼに赤外線カメラを設置しました。
30秒に一枚撮影する設定にしたところ、カモがたくさん写っています!喜びながら一枚ずつチェックしていきますがほとんどがマガモで、トモエガモはなかなか見つかりません。1500枚もある画像にだんだん心が折れていく中、ついに1361枚目にトモエガモが写っていました!
正直あまりうつりがよくなくてわかりにくいとは思いますが、まぎれもなくトモエガモです。頭を下げて餌を食べているのがわかります。
少しずつ夜の闇の中で謎だったトモエガモの習性がわかってきました。これからも調査を続けてトモエガモがたくさん暮らせる加賀市であるように努力したいと思います。